札幌地方裁判所 昭和43年(わ)370号 判決 1968年7月17日
本店所在地
札幌市中の島二条二丁目一九五番地
株式会社 ホテルニユー東京
右代表者代表取締役
玉腰東木
本店所在地
釧路市栄町四丁目二番地
株式会社 ニユー東京
右代表者代表取締役
玉腰サダ子
本籍
札幌市南三条東四丁目三番地
住居
同市藻岩下四五四番地
会社役員
玉腰東木
大正一三年一〇月一六日生
事件名
法人税法違反
出席検察官
秋山真三
同
弁護人 野切賢一
主文
1. 被告人株式会社ホテルニユー東京を罰金三〇〇万円に、
同株式会社ニユー東京を罰金八〇万円に、
同玉腰東木を懲役六月および罰金四〇万円にそれぞれ処する。
2. 被告人玉腰東木において右罰金を完納することができないときは、金二〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
3. 被告人玉腰東木に対し、この裁判が確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
第一、 被告会社株式会社ホテルニユー東京は札幌市中の島二条二丁目一九五番地に本店を置き、特殊浴場及び旅館業を営むもの、被告人玉腰東木は同会社の代表取締役としてその業務全般を総括しているものであるが、同被告人は被告会社の業務に関し、法人税を免がれることを企て、同会社経理係小野こと阿部郁子と共謀のうえ、いずれも売上の一部を除外してこれを薄外預金として仮名口座に預け入れ所得を秘匿するなどの不正な方法を講じ、
1. 右被告会社の昭和三九年四月一日から同四〇年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が一二三七万六〇七三円、これに対する法人税額四五五万二八〇〇円であつたのに、同四〇年五月二七日所轄の同市南一九条西九丁目所在の札幌東税務署において、同署長に対し、右事業年度の法人税確定申告をするに際し、欠損金三一三万五五八二円で所得がない旨の虚偽の確定申告書を提出し、よつて被告会社の右事業年度における正規の法人税四五五万二八〇〇円を免がれた、
2. 右被告会社の同四〇年四月一日から同四一年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が一〇八一万八三〇五円、これに対する法人税額三八二万二六〇〇円であつたのに同四一年五月三一日所轄の前記税務署において、同署長に対し、右事業年度の法人税確定申告をするに際し、欠損金四六万九五三二円で所得がない旨の虚偽の確定申告書を提出し、よつて被告会社の右事業年度における正規の法人税三八二万二六〇〇円を免がれた、
3. 右被告会社の同四一年四月一日から同四二年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が六三六万七六三七円、これに対する法人税額二〇一万八四〇〇円であるのに、同四一年五月三一日所轄の前記税務署において、同署長に対し、右事業年度の法人税確定申告をするに際し、欠損金一六八万三一四六円で所得がない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、よつて被告会社の右事業年度における正規の法人税二〇一万八四〇〇円を免がれた、
第二、 被告会社株式会社ニユー東京は釧路市栄町四丁目二番地に本店を置き、特殊浴場及び飲食店を営むもの被告人玉腰東木は同会社の監査役であり、また実質的には経営者としてその業務全般を統括しているものであるが、同被告人は被告会社の業務に関し、法人税を免がれることを企て、
4. 右被告会社の同四一年二月一六日から同年三月三一日までの事業年度における所得金額について、同会社従事員田村庫太郎に指示してその間の同会社の収入、支出をメモに記載したうえこれを被告人のもとに送付して報告させることとしながら、税務官吏の検査に供すべき正規の帳簿等を作成してこれに記載する等の方法をことさら履行せず、かつ収入の一部をことさら除外させて会社預金とは別途の仮名口座をもうけてこれに預け入れ、さらにその仮名を順次改変するなどして所得を秘匿するなどの不正な方法を講じ、右事業年度における実際の所得金額が一二五万一四〇一円、これに対する法人税額が四三万二八〇〇円であるのに、所轄の釧路税務署長に対し、法人税法所定の申告期限である同年五月三一日までに所定の申告をなさず、よつて被告会社の右事業年度における正規の法人税四三万二八〇〇円を免がれた、
5. 右田村庫太郎と共謀のうえ、収入の一部を除外し薄外預金として仮名口座に預け入れるなどして所得を秘匿し、かつ経費を過大に計上するなどの不正な方法により、被告会社の同四一年四月一日から同四二年三月三一日までの事業年度にかける実際の所得金額が八二六万七二三七円、これに対する法人税額が二六八万三四〇〇円であるのに、同四二年五月二九日、所轄の釧路市弊舞町二七番地所在の釧路税務署において、同署長に対し、右事業年度の法人税確定申告をするに際し、欠損金一〇三万七五七〇円で所得がない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、よつて被告会社の右事業年度における正規の法人税二六八万三四〇〇円を免がれたものである。
(証拠の標目)
判示全事実について
一、 被告人玉腰東木の当公判廷における供述
一、 同被告人の検察官に対する供述調書三通および大蔵事務官に対する質問てん末書五通
とくに判示第一事実について
一、 阿部郁子の検察官に対する供述調書二通および大蔵事務官に対する質問てん末書五通
一、 奥秀勝の検察官に対する供述調書二通および大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一、 田村庫太郎の検察官に対する供述調書(昭四三、五、二日付)、および大蔵事務官に対する質問てん末書(同二、一日付)
一、 小池新太郎の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、 北海道自動車工業株式会社作成の回答書
一、 中沢一良外一名作成の答申書
一、 野沢和子、亀谷弘子の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、 道央信用金庫本店、橋本洋子、北海道拓殖銀行薄野支店次長、同山鼻支店長、北海道銀行業務部調査役安藤幸久、北洋相互銀行豊平支店長代理、同山鼻支店櫛部フジ子、秋田銀行札幌支店次長各作成の各答申書
一、 道央信用金庫本店長、同山鼻支店長、札幌信用金庫五条支店長、中央信用組合山鼻支店長、北海道拓殖銀行本店営業部長、同薄野支店長、北海道銀行行啓通支店長、同狸小路支店長、弘前相互銀行札幌支店長、北陸銀行札幌支店長、北洋相互銀行本店営業部長、同豊平支店長、同山鼻支店長、秋田銀行札幌支店長各作成の各回答書
一、 金海東喜、山腰進、奥秀勝、玉木浩、市原常男各作成の各答申書
一、 松井武司、小原一吉各作成の回答書
一、 二宮政時、岩倉顕具、古野藤次郎、白川畠徳の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、 堀川浩作成の調査書二通
一、 鎌田良子の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、 札幌東税務署長作成の回答書二通
一、 玉腰サダ子の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、 堀川浩作成の脱税額計算書三通
一、 押収してある売上日計表一綴(昭和四三年押第九四号の一)、月別売上事績表(同号の二)、給料台帳(同号の三)、釧路伝票綴二綴(同号の四)、市外電話通話料金控(同号の五)、領収書(同号の六)、支払明細書(同号の七)、レジテープ(同号の八)、トルコ稼働表(同号の九)、売上日報綴(同号の一〇)、経費支払明細表(同号の一一)、別口請求書綴(同号の一二)、領収書(同号の一三、一四、一五)、請求書、領収書、(同号の一六)、田村庫太郎関係書類(同号の一七)、増改築工事関係書類(同号の一八、一九)、公正証書(同号の二〇)、不動産売買契約書(同号の二一)、小切手控(同号の二二、二三)、書類綴(申告控)(同号の二四)、総勘定元帳三冊(同号の二五)、請求書類(同号の二六)、
とくに判示第二の事実について
一、 釧路税務署長作成の回答書
一、 田村庫太郎の検察官に対する供述調書二通および大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一、 伊藤正和、玉腰徹の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、 秋田銀行釧路支店長、北海道拓殖銀行釧路支店長、北洋相互銀行釧路支店長、富士銀行釧路支店長各作成の各回答書
一、 押収してある釧路伝票綴(前同号の四)、普通預金通帳(同号の二七)、支払明細書(同号の七)、領収書(同号の六)、出納報告書控(同号の二八)、釧路伝票綴(同号の二九)、売上伝票(同号の三〇)、預り証控(同号の三一)、銀行記帳案内書(同号の三二)、(株)ニユー東京関係綴(同号の三三)、電話料金内訳帳(同号の三五)
一、 堀川浩作成の脱税計算書二通
(法令の適用)
判示所為1. 法人税法(昭和四〇年法律第三四号)附則一九条、右による改正前の旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)四八条一項、五一条一項
同2.3.4.5 法人税法一五九条一項、一六四条一項
同1.2.3.5 刑法六〇条
併合罪加重 同法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項
換刑処分 同法一八条
執行猶予 同法二五条一項
(裁判官 秋山規雄)